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札幌高等裁判所 昭和56年(ネ)82号 判決 1982年12月09日

控訴人(原告)

奥田岩男

被控訴人(被告)

日本生命保険相互会社

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し、金一一〇〇万円及びこれに対する昭和五三年四月二七日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張及び証拠については、当審において控訴人が甲第九号証の一、二を提出し、乙第一二号証の成立を認め、第一三、第一四号証の成立は不知と述べ、証人野崎佐吉の証言を援用し、被控訴人が乙第一二ないし第一四号証を提出し、甲第九号証の一、二の成立を認めると述べたほかは原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する(ただし、原判決七枚目表四行目の「2(一)」を「2」と改める。)。

三  当裁判所は、当審における証拠調の結果を斟酌しても、控訴人の請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は次に付加訂正するほかは原判決の理由説示と同一であるからこれを引用する。

1  原判決八枚目表九行目の「2(一)」を「2」と改め、同九枚目表一行目「野崎佐吉の」の次に「原審及び当審」を加える。

同枚目裏一〇行目の「の翌日には」を「後」と、同行目から一一行目の「本件事故車が当時四速のギアに入つていたことは原告も認めているので、これは」を「この回転数は、前記甲第六号証、原審証人小野忠夫、同由良修二の証言によつても、昭和五一年四月二五日の本件事故直後の数値か、それとも昭和五五年七月中旬ころの数値か必ずしも判然としないが、この回転数はギアが四速で」と改める。

同一〇枚目表一一行目の「に満たない」を「以下の」と、同枚目裏一行目の「未満」から七行目の「参照)。」までを「以下のとき(微酔)には歩行は正常であるが顔面に出て多弁陽気になり、〇・一五パーセント以上〇・三パーセント以下のとき(軽酔)には思考力が減退し、正常な歩行が困難となるところ、本件事故直後における訴外実のアルコール血中濃度は〇・一三三パーセント(一・四〇ミリグラム)であつたこと」と改める。

2  なお、成立に争いのない甲第九号証の一、二によれば、北海道共済農業協同組合連合会から控訴人に対し、訴外実の本件事故につき、同訴外人に「故意又は重大な過失」が認められないとして共済金が支払われていることが認められるが、弁論の全趣旨により成立を認めうる乙第一三、第一四号証によれば、右共済契約には本件保険契約と異なり五号の免責事由(「被保険者の・・・飲酒運転中の事故によるとき」)の定めは存在しないことがうかがわれるのであり、従つて、右共済金支払の事実は、訴外実が酒に酔つて正常な運転のできないおそれのある状態で本件事故車を運転しているときに本件事故が惹起されたとの前記証拠判断を左右するに足りないものである。

以上の通りで、控訴人の請求は失当で棄却すべきところ、これと同趣旨の原判決は相当で本件控訴は理由がないから民事訴訟法三八四条一項によりこれを棄却し、訴訟費用につき同法九五条、八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 渋川満 藤井一男 喜如嘉貢)

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